2011年10月28日金曜日

スマートフォンホームページ作成福島 タイ洪水でスマホなどは部品調達網に影響も、年末商戦前の増産に影

タイの洪水被害は、携帯電話・スマートフォンなど電子機器の部品調達網(サプライチェーン)に暗い影を落とし始めている。

フジクラ<5803.T>など折り曲げ可能なフレキシブルプリント基板(FPC)の主要メーカーは一部生産工程をタイに集中させているが、本来は年末商戦を控え、増産体制に入るこの時期に操業停止に追い込まれている。部品各社は供給責任を果たすため、代替生産などの対応を検討しているが、納入先の生産再開時期など不透明要因も多く、今後の生産活動に支障が出る恐れが高まっている。

<生産計画への影響が不透明>

NOK<7240.T>が100%出資する日本メクトロン(東京都港区)は、タイ子会社2社で12日から工場の稼働を停止している。浸水被害はないが、従業員の安全確保のため、操業再開は17日以降となる見通し。ただ「洪水の状況によってさらに操業停止期間を延長せざるを得ない」(日本メクトロン)という。 

停止した2社のうち1社がFPCの生産拠点。NOKによると、日本メクトロンのFPCにおける世界シェアは25%強で業界首位。タイ拠点のFPC生産量が同社の全体量に占める割合は非公表だが、洪水が長期化した場合は「代替できるものは、他拠点から供給するなどの対策をとる」(NOKのIR担当者)方針で、生産については現段階では問題がないと見ている。だが、現地では冠水した道路もあり、物流面での停滞も懸念されるという。

それ以上に懸念されるのは、主要な供給先となるハードディスクドライブ(HDD)メーカーの今後の稼働状況。タイには大手メーカー各社が生産拠点を構える。日本電産<6594.OS>のタイ子会社など、既に操業停止に追い込まれたHDD向け部品のサプライヤーもあり、繁忙期での操業停止が今後の生産計画にどう響くかは不透明な状況だ。NOKは「(顧客の)生産次第で影響が大きく変わる。再開した後にどうリカバーするか、情報が錯そうしている」(IR担当者)と、今後の市場動向を不安視している。

<競合他社への代替生産要請も検討>

一方、フジクラは、FPCの主要拠点であるフジクラエレクトロニクス(タイランド)のアユタヤ工場の一部設備が浸水により被害を受けており、現在も操業できない状況。現地からの情報を収集している段階だ。同工場はFPCに回路を形成する前工程のほぼ全量を手掛けているが、稼働再開が遅れれば、国内外で後工程を手掛ける他拠点の生産に影響が出ることになる。 

フジクラによると、同社のFPCの世界シェアは10%前後。FPCの前工程は、一極集中しなければ設備投資費用を回収できなくなるといった事情があったという。同社が生産したFPCは一度、携帯電話などを受託製造するEMSに供給される仕組みとなる。主要な最終顧客名は明らかにしていないが、クリスマス前の受注増と、スマートフォンの需要増を見込み、タイでのFPCの生産能力を3割程度増強したばかりだった。今後の状況を見極めながら、必要があれば競合メーカーに対し、一時的な代替生産などを要請することを検討する。

FPCの世界シェアでフジクラと拮抗するとされる住友電気工業<5802.T>は、タイ国内にFPC工場がなく、現段階での影響はないという。

<実際の被害は把握困難>

FPCは、携帯ゲーム機器やハードディスクドライブ(HDD)など、幅広い電子機器、部品に利用されている。そのほとんどは最終顧客ごとに仕様が異なる「1品もの」で、「代替生産は容易ではない」(業界関係者)との指摘もある。富士キメラ総研によると、2010年のFPC市場は世界全体で7880億円で、15年には10年比14.3%増の9010億円に成長する見通し。

約1300の日系企業・団体で構成する盤谷日本人商工会議所(バンコク市)の石井信行事務局長は、洪水がサプライチェーンに及ぼす影響について「水深5─6メートルほど水に浸かってしまったところもある。工場に近づけない状況で、現状が把握できていない」と語る。同商工会議所によると、日系企業は統計上は約7000社タイに進出しているとされているが、すでに撤退をしている現地法人などもあり、稼働しているのはその半分ほどという指摘もあり、電子部品メーカーが実際、何社進出しているのかの実態はつかめていないという。

(ロイターニュース 長田善行;編集 北松克朗)